音楽

2007年3月24日 (土)

やっぱりすごいよなぁ

 『ゴジラVSキングギドラ』について思ったことを・・・・・・。

 『メカゴジラの逆襲』以来のゴジラ映画の音楽担当である。クレジットも「音楽監督」となった。東宝60周年映画であり、キングギドラの復活ということで、なんかお祭り気分である。

 キングギドラの登場は、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』以来である。出演映画は、『三大怪獣地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』を含め、4本目だ。すべて、伊福部さんが音楽をつけている。『~ガイガン』は、以前のライブラリーからの使用なので、音楽を付けたわけではないが、それを差し引いても、伊福部さんあってのキングギドラだったわけだ。キングギドラの出演映画は、複数の地球怪獣が出て、キングギドラと戦うという構図(『~ガイガン』だけはタッグマッチ形式、新怪獣ガイガンがメインなので仕方が無い)で、怪獣についている音楽が同じモチーフが基本的に使われている。

 また、『~ガイガン』は特殊な事情なので省くが、伊福部さんにとって初めての本多監督以外のゴジラ映画である。そういう意味では、ちょっとした行き違いもあったようだ。

 キングギドラと自衛隊の戦闘機との空中戦のシーンだ。最初は、特撮シーンのみの構成だったのを、音楽が決まってから、自衛隊の空撮ライブラリーを大森監督が挿入したらしい。それを見た伊福部さんが「僕のつくったのはキングギドラのテーマであって、自衛隊の音楽じゃない。こんなに自衛隊のアップが入るんだったら、自衛隊向けにマーチをつくらなきゃいけない。明日までにできない。」と言ったそうだ。それで、急遽、音楽を差し替えた。『空の大怪獣ラドン』の「ラドン追撃せよ」を使った。曲は、CD『オスティナート』にも収録されている数年前に新規録音されているものを使用した(はず、聞いた感じはそうだ)。それを見て伊福部さんは「アッだめだ、だめだ」といったらしい。大森監督は、ずっとよくなって絵の迫力は出てきたと思って、一番気に入っているとインタビューで答えている。確かにこの場面だけ見るといいのかもしれないが、映画全体の中で見ると伊福部さんの言うのがわかる。録音を一緒にやっていないので、編成が違うので、音色が違うのだ。ものすごく軽く感じる。空気が違うといったらいいのか。ライブラリー部分の映像も画質が随分違うので、気になりだすとホントに気になって仕方ないシーンだ。

 で、なりよりすごいのは、北海道の決戦シーンだ。ゴジラの登場シーン以外は、キングギドラのモチーフだ。有利不利をテンポで表現している。ゴジラが有利になり、キングギドラが負けるシーンでは、通常でもスローなテンポを一層落としている。この落とし具合が絶妙なのだ。その前までのキングギドラ有利シーンに流れていた音楽に対してすごく、違和感があるのだ。違和感が出る程度にテンポを落とす。これがすごい。

 『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』でも、自衛隊が独断で発砲を開始し、統制が取れなくなったシーンで、通常のマーチより遅いテンポの曲を流して、その攻撃が散漫になっていることをよく表現している。ガイラに対する攻撃は結局失敗。

 これらのシーンは、ゴジラのモチーフやガイラのモチーフでも映画としては成立しそうなのだが、でも、メインは「有利なゴジラ」ではなく「不利な、負けるキングギドラ」、「自衛隊と戦うガイラ」ではなく「一時統制の取れなくなった自衛隊」だということを明確したい、表現者の意志がよく出ていると思う。それがすごいんだなぁ。

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