あの忌まわしいJR福知山線の事故からちょうど2年がたった。
本来安全最優先の交通機関が、速度優先となってしまったのは、JR西日本の苦しい事情もあったものと思う。結局、事故が起これば、そんな事情なんか吹っ飛んでしまうのだが、その事態が本当に発生するまで先延ばしになってしまうのは、どこの業界でも大なり小なりあるものだろう。ただ、事が重大なだけに、そんな風に済ませるわけに行かないのも事実だ。でも、あの事故が起こるまで、あんな悲惨なことが起ころうと予想できた人がどれほどいただろうか?
だいたい、JRと私鉄の大きな違いは、駅間の距離だ。JRは概ね次の駅までの距離が長い。私鉄は次の駅までの距離が短い。これは全国的に言えることだ。例えば、品川-横浜間では、JRが京浜東北線で9駅、京浜急行で25駅(品川、横浜を含む)。完全に平行しているわけではないので、単純比較はできないが、差が大きいだけに明らかに駅間の距離が違うと言えるだろう。駅間距離が短いと停車の頻度が多くなるので、到達時間がかかる。距離が短ければ、最高速度も落とさざるを得ない。だから、私鉄の特急・快速よりもJRの各停の方が、早く着くというようなこともあるわけだ。私鉄の特急や快速は、どうしてもその前を走る「より遅い各停」があるため、スピードも出せない。それゆえ、事故リスクは下がるのだ。
関西の方に目を移すと、国鉄時代からのスピード勝負という伝統がある。大阪・梅田-神戸・三宮間でのJR神戸線と阪神、阪急の三つ巴の競争。大阪-京都間のJR京都線と阪急、京阪の競争。大阪・難波-奈良間のJR大和路線と近鉄の競争。難波・天王寺-和歌山間のJR阪和線と南海の競争。そして、大阪-宝塚間のJR宝塚線(福知山線)と阪急の競争。運賃が高い国鉄と安い私鉄の競争は、国鉄は速達サービスの提供という特化で挑んできたのだ。それがある程度成功を収めてきていた。大阪-神戸間では、ほとんど停車駅のない新快速でできる限り神戸に早く着くようにした国鉄と、日本一の加速のジェットカーで駅間時間の短縮をはかった阪神の競争に見られるように、早く着くというのは、関西では重要な要素となっていた。
実際、学生時代に近鉄を使って大阪に出ていたが、朝のラッシュ時は快速急行でもかなり遅く、前を走る準急や各停のために、途中で信号待ち停車することはよくあったわけだ。これにはかなりのストレスを感じていた。JRの方が絶対早かったが、最寄り駅とバイト先の関係で近鉄を使い続けてきた。
最近は、値上げしないJRとの価格差がなくなってきて、JRがますます有利になっていた。なぜ、値上げせずにすんだのか?やはり、投資に金を使ってこなかったせいであると思う。安全投資だけでなく、投資全体を押さえているはずだ。それは、JR西日本が、多く抱えるローカル線のためだ。関西、広島地区+岡山地区以外はかなり、しんどい。関西ですらまだ、103系が走っているのだ。大阪環状線がやっと201系に置き換わり始めた。103系はJR東日本では、完全に引退したし、201系ももうなくなりつつある。山手線に至っては、205系からE231系に完全に置き換わった。JR西日本は東海道本線(京都-大阪-神戸)に集中したのだ。ここに賭けるしかなかった。事故を起こした207系も東海道線に登場し、主力通勤電車になった。国鉄型ではないJR西日本で初めての通勤型だ。大阪ですらこの状態だから、広島、岡山も古い車両が主役だ。優先投資は、瀬戸大橋線くらい。苦しい台所事情が伺える。ただ、関西では、速達列車の充実は行ってきた。221系であり、223系だ。新快速や快速を充実させてきた。103系が残っていく一方で、113系、115系、117系は、どんどん減っていっている。
その上、株式の上場を急いだため、さらなる収益の改善を目論んだ。それが、相互乗り入れ、乗り換えせずに直接結ぶサービスだ。アーバンネットワークの名のもと、どんどん進められていった。その元祖とも言えるのが、国鉄時代から始まっている関西本線(大和路線)の環状線乗り入れではないだろうか。でも、これは、長い間、デイタイムのみだった。ラッシュアワーにまで拡大されたのはJRになってからだ。このようなことを各線で行っていった。昔は、宝塚から京都方面に行こうと思えば、大阪で乗り換えるのが当たり前だった。大阪から和歌山に行くには、天王寺で乗り換えるのが当然だった。四条畷から神戸に行くには、京橋と大阪の2駅で乗り換えなければならなかった。乗り換えをなくし、直通列車を増やしていった。そのため、1列車の遅れが、多くの路線のダイヤに影響し狂っていくという状況を生んでいった。ここまでしなかったら、あの事故は起こらなかったのではないだろうか。福知山線だけの遅れですむのなら、それほど急がなかったのではないかとも思う。
あの事故以降も、このサービスをやめていない。少し乗り換えるくらいいいのではないか。東京の場合、乗り換えホームが遠かったりするが、それでも、無理な直通列車は走らせていないように思う。2路線くらいならともかく、多くの路線が複雑に絡むネットワークは無理が大きすぎるように思う。
リスクという見方をすれば、事故リスクをなくすには、列車を走らさなければいい。そういうわけにいかないから、リスクをできる限り増やさないようにすべきなのだ。スピードを上げれば、リスクがあがる。運転ダイヤを複雑にするのもリスクがあがる。そのリスクを下げるために、乗客に駅の中を歩いてもらうことも必要なんじゃないだろうか。
JR北海道や九州、四国に比べれば、西日本はいいかもしれないが、東日本や東海とは張り合わない方がいいのではないだろうか。首都圏と東北・上越新幹線などを持つ東日本と東海道新幹線を持ち、営業エリアが狭い東海とは条件が違いすぎると思う。関西圏を持つが故に、有利だという幻想を捨てた方がいいと思う。
沿線の住民に遅れても、「まあ、仕方ない」と思ってもらえる日豊本線を見習いなさい。延岡-佐伯間では、「特急にちりん」ですら自動車にも抜かれるほどゆっくり走っている。九州は、台風が来たら全線不通が当たり前。大阪から来た人もそんなもんだと思っている。同じJR、元はといえば同じ国鉄なのにこんなに見られ方が違うのは、なぜなんでしょうか。
背伸びをせずに、身の丈にあった経営をして、ゆっくり進んでいくのがいいんだろうな。
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